台湾の液晶パネル大手奇美電子が、中国の浙江省寧波にパネルを手作業でモジュール(複合部品)に組み立てる後工程工場をつくることを決めた。二月上旬のアナリスト説明会では、何昭陽総経理ら首脳が二〇〇七年上半期までに二億七千万ドル(約三百二十億円)を投じる生産計画を丁寧に説明した。 奇美電子は台湾独立支持派の経営者として知られる許文龍氏が創業した石油化学大手奇美実業のグループ企業。友達光電と並び、薄型テレビの普及で急成長する台湾液晶パネルの雄だ。しかし、製造コストの安い中国に後工程の工場がない奇美は、友達と「一年間で四十五億台湾ドル(約百六十億円)の(利益の)差がつく」(許氏)弱点を抱えていた。 許氏は〇五年三月下旬、台湾紙の一面トップで、中国が台湾への武力行使の法的根拠として直前に施行した「反国家分裂法」で「心が落ち着いた」とする書簡を公開。真意をめぐり様々な観測が流れたが、「後工程工場の建設認可と引き換えに“転向”を迫られた」との説もその一つだった。 経緯を知る台湾各紙は説明会の翌日、後工程工場のニュースを詳報した。しかし、説明会の最大のニュースは〇六年の設備投資額を前年比で約六割増の一千億台湾ドル(約三千六百億円)とする計画を公表したことだったはずだ。これは半導体最大手の台湾積体電路製造の実績を上回り、台湾メーカー一社の単年度の設備投資としては過去最高となる破格の金額である。

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