世界五位の小売りチェーン、英テスコが米国に進出する。年約五百億円を投じ、二〇〇七年から西海岸カリフォルニア州にコンビニエンス・ストアを出店し始めるというのだ。 だが、欧州、とりわけ英国の小売業にとって米国市場は「鬼門」だ。音楽専門店チェーンのHMVは〇四年に米国の店舗を閉め、書籍のWHスミスも赤字の米事業から撤退。衣料品・食品小売りチェーンのマークス・アンド・スペンサーも〇一年に子会社だった衣料品ブルックス・ブラザーズを米小売企業に売却したように、実はいずれも米国進出に成功していない。 英国企業にとって米国は失敗続きの市場であるうえに、世界最大の小売業ウォルマートの牙城でもある。にもかかわらず、テスコが果敢に進出する背景には、英国内での成長力の限界という大きな問題がある。国内シェアが三〇%と断トツのナンバーワンになり、市場独占との批判が強まっている。〇五年の売上高は三百四十億ポンド(約六兆八千億円)。その二割を占めるようになった欧州やアジアなど国外に成長の糧を探すしかない。そこで、カリフォルニアでの「都市部の小型スーパー」という隙間市場には成長の余地があるとみた。業績が好調な今がそのチャンスだったといえる。

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