景気低迷による旅客の伸び悩みと値引き競争、他国に比べて割高な航空燃料や着陸料などを背景に各社が軒並み巨額の赤字に陥っていたインドの航空業界に、ようやく立ち直りの兆しが見えてきた。大手財閥タタ・グループがアジア最大のLCC(格安航空会社)エア・アジア、そしてシンガポール航空(SIA)とそれぞれ合弁会社を設立、5-6月にも運航を開始する見通しとなった。昨年秋に新規参入した南インドの「地域航空会社」エア・コスタもまずまずの滑り出しを見せている。しかし、航空業界が健全な発展を目指すためには、航空燃料に対する税制や着陸料などの見直しはもちろん、地方空港の整備や人材育成など、様々な課題が指摘されている。

 

タタ60年越しの悲願

 タタ・グループ中興の祖として約50年にわたって会長を務めたJ・R・D・タタ(ジェハンギリ・ラタンジ・ダダボイ・タタ、1904-93)は、自ら陣頭指揮を取って1932年にエア・インディアの前身であるタタ航空を設立したが、同社は53年にインド政府によって国営化されてしまう。その後、タタ・グループは94年、SIAと合弁の航空会社を設立したものの、プロジェクトは官僚機構の壁に阻まれて失敗、会社も解散の憂き目を見た。タタにとって航空業界への再参入は、まさに60年越しの悲願だった。

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