海の安全保障「新時代」にどう対応すべきか

執筆者:山田吉彦2006年4月号

アジアの海の治安とパワーバランスは、大きく変化しつつある。これから求められる日本の役割とは何か。 今年一月、米海軍イージス駆逐艦ウィンストン・S・チャーチルは、ソマリア沖を航行中の不審なダウ船(木造機帆船)を発見し、停船を命じた。昨年来、東アフリカ・ソマリア沖の海域では海賊被害が多発している。十一月には米企業が運行する豪華客船シーボーン・スピリットが襲撃される事件が起こり、米海軍が警戒活動を展開していた。ダウ船は逃亡したが、八時間に亘る追跡劇の末、二十六人(インド人十六人、ソマリア人十人)の船員とともに拿捕され、武器の隠し場所が発見された。 ソマリア沖の海賊の特徴は、機関銃やロケットランチャーなどで重武装し、沿岸から百海里以上も離れた沖まで出没することだ。今回、拿捕されたダウ船は、海賊グループの母船と見られている。海賊は獲物となる船を求めてインド洋をさまよう。まるで、大航海時代のアラビア海賊のようである。獲物が見つかるとこの母船から長さ八メートルほどの高速艇に乗り移り、襲撃するのである。 昨年、ソマリア沖では三十五件の海賊事件が発生した。十月には国連世界食糧計画からソマリア暫定政府への支援物資を運ぶ貨物船が襲われ船員が拘束される事件が起こり、暫定政府は自国の沿岸警備能力の不備を認め、国際的な支援要請の声明を発表した。これを受け国連の海事専門機関である国際海事機関(IMO=本部ロンドン)は、国連安全保障理事会へ対応を求めている。

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