彼女たちの挺身隊(下)

執筆者:六車由実2014年5月7日

 続いて、ハルコさんへの聞き書きの様子を横でうかがいながら大きく頷いていたさか江さんにも、挺身隊の経験について話を聞かせてもらうことにした。本当は一緒に挺身隊に行ったという年江さんにも参加してもらい、2人のやり取りの中で聞き書きを進めていきたかったのだが、年江さんは1月に右大腿部を骨折して現在自宅療養中であるため、年江さんには後でお話を聞きに自宅へうかがうとして、ひとまずはさか江さんに聞き書きをさせてもらうことにしたのであった。

 

麻糸を撚る仕事

 大正13年生まれのさか江さんたちが挺身隊に行ったのは、少女時代だったハルコさんとは違い、娘盛りの二十歳の頃だった。尋常小学校を卒業後、地元の私学の高等女学校へと3年間通った後、行儀見習いのため東京へとお屋敷奉公へ出た。この東京の奉公時代での経験がさか江さんにとっては忘れられない思い出となっており、お風呂の中などで時々話を聞かせてくれるが、それについてはまた別の機会に取っておくことにする。

 さて、お屋敷奉公から帰ってきた頃は戦況も悪化し、国民が総動員される時代へと突入していた。さか江さんは、郷里・獅子浜の未婚女性で組織されていた女子青年団に否応なしに入れられたという。女子青年団では、出征兵士を見送ったり、戦地から遺骨を迎えたりということをしていたそうだ。挺身隊には、その女子青年団の集団が共に向かうことになる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。