新たな米国家安全保障戦略が日本に求めた「積極性」

執筆者:マイケル・グリーン2006年5月号

[ワシントン発]三月十六日、ブッシュ政権は新たな「国家安全保障戦略」を公表した。 米メディアの関心は、二〇〇二年九月に出された前回報告書で打ち出され、イラク開戦の理論的支えとなった「先制攻撃(pre-emption)」戦略が今次報告書でも維持されるのか、あるいは放棄されるのかに集中した。 答えは果たしてどちらだったのかといえば、ブッシュ政権は先制攻撃する戦略を維持しながら、同時にテロと戦い、国家の安全を守るための長期戦略を明確にした、というのが正解だ。 戦略報告書をまとめたのは、デューク大学の高名な政治学者ピーター・フィーバー教授(編集部注・本誌二〇〇〇年四号に寄稿。今年二月号に関連記事掲載)である。クリントン政権時代に国家安全保障会議(NSC)で国防政策を担当した経験のある教授は、今回、スティーブン・ハドリー国家安全保障問題担当補佐官の依頼を受けて新戦略を練り上げた。 新戦略は五つの柱から成り立っている。 第一に、国家の力を維持し、テロを打破することが喫緊の課題であるとの認識。第二に、自由と民主主義のプラス面を知らしめることによってテロリストのイデオロギーに打ち勝つためには、長期的アプローチが重要であるとの指摘。第三に、自由と民主主義はテロに勝つための単なる道具ではなく、そのものがアメリカの最も重要なゴールであるということの確認。第四に、独裁を終わらせ民主主義を広めるには、迅速な経済発展が不可欠であることを強調。そして最後に、大量破壊兵器拡散、テロ、あるいは自然災害といった国境を越えた脅威に対抗するためには、国際社会との協調が重要であるとも指摘している。

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