TPPの進展を売り込んだ米側16分間の「スピン」

執筆者:春名幹男2014年4月28日

  「25日付夕刊の紙面は荒れるぞ」――ある大手メディアの元経済部長がそう予想した通りの結果になった。

  「TPP日米合意先送り」「合意至らず」と多くの新聞が1面トップで報じた中で、読売だけは堂々と「実質合意」。政府・与党の関係者でもどちらが真相か、と戸惑ったという。

 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の最高責任者、甘利明経済財政・再生相は25日朝記者団に「大筋合意ではない」と答えた。同日夕、疲れた表情で記者会見した時も、「実質合意も大筋合意もないが、収れんに向かって的確な前進をした」とはっきりしない回答。26日朝のTBS番組では「7-8合目くらいで、9合目まではいかない。上の方にいくと空気が薄くなって登りづらくなる」と意味深長な発言。番組終了後には、「1項目として全部決着したということはない」と合意を否定した。

 読売がその後も「実質合意」にこだわる理由はなお不明だが、一体どんな前進があったのか、ことは国民生活に直結する問題。真相を追究する必要があろう。

 

共同声明を人質に「弾み」と確認

 そもそも、TPP交渉は日米首脳会談の時点で極めて微妙な状況に置かれていた。オバマ政権は11月の米中間選挙を前に、妥結を急いでいる。5月中旬の首席交渉官会合に向けて、TPP交渉参加12カ国の中で突出した経済規模を持つ日米がこの首脳会談で合意し、弾みを付ける狙いがあった。日米が合意できなければ、交渉は暗礁に乗り上げる。

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