福島第1原発の事故の影響で反対の声が広がっていた建設中の台湾の第4原発について、馬英九政権は2016年までの任期中の運転開始を断念した。運転開始の前提として自らが打ち出した住民投票も行わないことが事実上確定した。ほぼ完成している第4原発の1号機と2号機はそのまま「封印」され、実際に運転を行うかどうかは「次世代の判断に委ねる」(馬総統)ことになった。

 馬政権は「中止ではなく、停止である」と取り繕ってはいるが、9割以上建設が進んだ原発の建設がこの段階で中断に追い込まれることは、世界的にも異例なケースだろう。日本の原発メーカーも深く関わった原発だけに、そのインパクトは小さくない。

 建設主体の台湾電力は莫大な負債を抱えることになり、台湾の将来の電力供給にも影響が出ると見られているが、連日、台北市内の中心部で展開されている反対運動に押された馬政権が右往左往した末に追い込まれて下した苦渋の決断だった。

 事態は、台湾政治らしく、1週間の間にめまぐるしく変化しながら一気に進んだ。

 そのすぐれた人格や一党独裁時代の国民党に家族を惨殺された経緯から、台湾で与野党から一目置かれる環境保護運動の精神的指導者で、民進党の元主席でもある林義雄氏が、反原発のためにハンガーストライキを実行に移したのが4月22日だった。

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