春休みの入場者でにぎわう大阪・ユニバーサルスタジオジャパン。そこから一キロほど離れた大阪ガス旧酉島製造所の構内で、この四月から一つのパイロットプラント(実験装置)が稼働を始めた。プラントは縦横一〇メートル四方、高さは一五メートルと驚くほど小さい。しかし、これは、プロモーションビデオのナレーションによれば「日本企業がエネルギー・メジャーになることを可能にするプラント」。関係者たちも、「これでオイルメジャーに一泡吹かせられる」と胸を躍らせる。 このプラントは、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の委託を受けてエンジニアリング最大手の日揮と大阪ガスが共同開発した「GTL(ガス・ツー・リキッド)プラント」だ。 GTLとは、天然ガスを改質して合成ガスを作り、その分子構造を触媒で組み替えて軽油や灯油、ナフサなどを製造する技術のことで、メジャーを中心にLNG(液化天然ガス)に並ぶ有望な次世代燃料として技術開発が進められている。「眠れる資源」を活かすGTL GTLの特徴は、環境への負荷が低いこととエネルギーの安全保障に直結する「利便性と投資のしやすさ」にある。 例えばGTL軽油は、現在市販されている軽油とは組成や物性がかなり異なっている。粒子状物質(PM)の原因物質である芳香族炭化水素と硫黄分をほとんど含んでいないのだ。さらに大気汚染の原因となるSOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)もほとんど発生しない。これでディーゼル自動車の排気ガスの浄化に威力を発揮する。ディーゼルに三〇%程度ブレンドしたものでも、NOxが格段に減ることが報告されている。

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