天安門25周年前夜「中国知識人たち」の受難

執筆者:野嶋剛2014年5月12日

 かつてのソ連で、こんな古典的なジョークがあった。収容所に3人の男がいて、1人が「私の罪は同志カガノーヴィチ(スターリンの側近)を批判したことです」と言った。もう1人が「私の罪は同志カガノーヴィチを賛美したことです」と言った。そこにいた最後の1人に、2人が「君は?」と聞いたら、「私がカガノーヴィチだ」と答えたという話である。

 これは、あらゆる人間を逮捕してしまうスターリン時代に象徴される粛正の大規模さ、無差別性を表現したもので、3人目の人物はポポフだったり、フルシチョフだったり、いろいろと入れ替わるのだが、ジョークそのものの出来がいいので今日まで語り継がれている。

 1989年6月4日に起きた天安門事件の25周年が近づく中国で、いま起きているのは、このジョークのような状況ではないかということが中国の微博(ウェイボー、中国版ツイッター)でささやかれていて、なるほどと思った。

 中国で著名な人権派弁護士である浦志強が、先週、北京の公安当局に拘束された。天安門事件の真相解明を求める非公開の研究会に出席した後だった。ほかにも数名が拘束されたという。節目を控えて、当局が神経をとがらせていることが理由であることは確かだろう。

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