それでも罷り通る空港整備特会の借金増幅体質

執筆者:まさのあつこ2006年5月号

いちど決まった計画は、需要がなくとも突き進む。赤字も平気な役人の、長きにわたる“成果”こそ、競争力なき空港と一兆円もの借金だ。 静岡駅から車で四十分、こんもりと丸味を帯びた茶畑をのぼると、眼下に東西に長く削られた平地があらわれた。牧ノ原台地の一角を切り崩した、静岡空港の滑走路予定地だ。標高は百三十メートルを超え、あたり一帯には霧がたちこめている。予定地内には、用地買収に応じない古くからの地権者(農家や酪農家)の土地が点々と残っている。 静岡空港はすでに二回も開港予定を延期しており、現在は二〇〇九年の開港を予定。県は未買収地の強制収用手続きを一歩進め、二月十三日に収用裁決申請を行なった。 しかし、空港建設に反対しているのは地権者だけではない。〇五年の静岡県知事選を前に各紙が県内で行なった世論調査でもほぼ半数が反対の意思を示し、賛成を上回った。 地方空港は航空業界の経営難を受けて、路線の撤退が相次ぐ「冬の時代」を迎えている。羽田・伊丹・関空と結ぶドル箱路線を想定しておらず、新幹線を使えば東京・名古屋までそれぞれ一時間で行くことができる静岡空港の前途は暗い。 路線の低搭乗率を心配する県は、航空会社を就航させるため搭乗率を保証する能登空港方式を視野に入れているが、客足が伸びなければ単に利益が上がらないだけでなく、航空会社の得べかりし利益(得られることを約束した運賃)の補填が県財政にのしかかる。静岡県はすでに二兆円を優に超える県債という名の借金を抱えているのに。

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