ドイツで見た中国現代写真

執筆者:大野ゆり子2006年5月号

 久しぶりにドイツの大学を訪れる機会があったが、五年ほど前にはほとんど皆無だったアジアからの学生たちを、キャンパスでたくさん見かけて驚いた。私の卒業した大学では、今や二〇%が中国からの留学生。留学生担当の窓口も、以前は外国人を威圧することにのみ生きがいを持っているようなドイツの中年女性だったが、若くて溌溂とし、親身に学生の相談に乗りそうな中国の女性に変わっていた。それだけ、大学側も中国からの留学生に居心地の良い環境を整えることに熱心なのだろう。 ともに美術史を学んだ中国人のカメラマンも、最近は撮影のかたわら、中国とドイツの文化交流事業や、交換留学生のプログラムに忙しい。中国からのドイツ文学専攻の学生たちにホームステイ先の世話をし、中国に関心のあるドイツ人学生には中国旅行をアレンジする。年々、需要は増える一方だそうで、若いドイツ人学生の間にも、中国ブームが起きている。 ベルリンで五月半ばまで開催されている「中国 過去と未来の間で」という中国現代写真展は、そうしたドイツでの中国熱に応えるような、興味深い展示内容だった。出展している写真家は一九六〇―七〇年代生まれ。それまで、どちらかというと職人仕事と思われていた写真が、芸術のひとつの表現方法として考えられるようになったのは、中国ではここ十年ぐらいの新しい現象だという。

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