「圧勝」だけに期待も大きいが、課題も多い (C)EPA=時事
「圧勝」だけに期待も大きいが、課題も多い (C)EPA=時事

 有権者8億1450万人。文字通り世界最大の民主政治を実践するインドの総選挙(下院選、定数543議席)は、5月16日に一斉開票され、西部グジャラート州首相(県知事に相当)のナレンドラ・モディ氏(63)を首相候補に立てた最大野党インド人民党(BJP)率いる野党連合が予想外の圧勝を飾り、10年ぶりの政権奪回を決めた。工業開発やインフラ整備、外資誘致など、グジャラート州の経済改革で大きな実績を挙げたモディ氏が、その優れた経営感覚と即断即決の政治スタイルで、若者や都市住民を中心に全インドで幅広い人気を集めた結果だ。

 モディ氏を前面に押し立て、その個人的人気に乗ったBJPの大勝利は、長年のコンセンサス政治・多党政治の伝統が、強烈なカリスマ性を持ったリーダーシップへと移行する可能性を示したこと、そしてモディ氏の掲げた「経済成長」のスローガンが、インド政治を長年分断してきた宗教やカースト、民族といったさまざまなファクターを乗り越えた(少なくとも現象面では)、という意味において、インド政治史上の画期的な転換点となりそうだ。

「モディ政権」は当面、前政権が道半ばで放り出した多くの改革案件を片づけていかねばならない。経済改革を再び加速させ、インド経済を8-9%台の高成長軌道に復帰させることこそ、所得向上や雇用の確保、教育・医療の充実を求める有権者が最も期待するところだ。

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