「世界最速」の選手、宮間あや
2014年5月29日
右サイドからショートパスが折り返されたとき、宮間あや選手はまだペナルティエリアのだいぶ手前にいた。宮間はそのパスをワンタッチで簡単に前方へ蹴った。時間が変化したのはその瞬間だ。ボールはまるで紙飛行機のようになめらかに飛び、格納庫へ戻るかのように、すーっとゴール左上の隅へ収まった。
なでしこリーグ第6節、浦和レッズレディース対岡山湯郷ベルの試合でのゴールである。あまりに美しすぎるその軌道を、私は一生忘れないだろう。
だから、なでしこジャパンはアジアカップで優勝すると、私は確信していた。宮間あやがキャプテンを務めるチームが、負けるはずがない。MVP受賞も当然である。何しろ、今、世界最高の選手なのだから。
世界標準を作り出す
宮間のキックにミスはない。宮間の繰り出すパスに、受け手の選手がきちんと呼吸を合わせれば、必ずそれは決定的チャンスになる。現代のサッカーでは、完全に引いて守っているケースを除けば、そこを突かれたら相手は冷静さを失うという致命的なツボのような箇所が、守備陣のまわりには必ず存在しているが、宮間はどこにいてもどんな体勢からでも、ほぼ確実にそのツボを突くことができる。パスミスのように見えるのは、大半は受け手の問題なのだ。
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