年金改革が残した「役人優遇の格差社会」

執筆者:山田利三2006年6月号

あらゆる改革に面従腹背の役人に騙されてはいけない。年金改革を見よ。サラリーマンだけに不利が吹き送られてしまった。「これで一元化はジ・エンドだ」 四月二十八日、(サラリーマンの)厚生年金と(公務員の)共済年金を一元化する基本方針が閣議決定されたことを受け、ある自民党幹部はそう言い放った。まるで「年金改革は一丁上がり」と言わんばかりに。 冗談ではない。基本方針は改革の「出口」どころか、真っ当な「入口」にすらたどり着いていない骨抜きの産物だ。分立し複雑な日本の年金制度に不公平感は残されたまま。これでは国民に充満する年金不信を拭い去ることなどできはしない。「官民格差の是正は(自営業者の)国民年金抜きでは考えられない」 二十八日の閣議後、民主党の鳩山由紀夫幹事長は政府案を強く批判した。自民、公明、民主の三党合意により発足した年金改革の与野党協議を中断させている民主党に大口を叩く資格はない。ただ、今回の年金一元化をめぐる政府・与党内の調整で、国民年金の扱いが顧みられることはなかった。それどころか、「まずは厚生・共済年金の差をなくす」という矮小化された政府の建前すら、実現できたとはいえない。とりわけ、公務員共済だけに投入される巨額の税金「追加費用」の廃止論議は、大山鳴動して鼠一匹に終わった。

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