前向きだが「地雷」の埋まった「日朝合意文」

執筆者:平井久志2014年6月3日

 外交はやはり秘密交渉の方が、成果が出るようだ。日朝両政府が5月29日に発表したスウェーデンのストックホルムで5月26-28日に行った日朝局長級協議を受けての合意文発表を見てそう感じた。

 もちろん、今回の合意はストックホルムでの協議の結果ではあるが、この合意文の内容がストックホルムの協議で生まれたとは考えにくい。

 ストックホルム協議が始まる前、日朝関係筋は「今回の協議の現場での発表はない。双方が本国に持ち帰り、その結果を受けて本国で発表になる可能性が高い。本国での調整ができなければ、合意は次回に持ち越す」と述べた。

 筆者は実は、今回では合意は無理で、現場で合意した内容を本国で検討し、次回の局長級協議で合意ではないかと踏んでいた。しかし、日朝間の協議のテンポは筆者の予想を上回るスピードだった。

 

スタートは横田夫妻の要請

 先に本サイトの「横田夫妻が生み出した『日朝』新局面」(3月24日)で指摘したが、日朝間の本格的な協議は拉致被害者の横田めぐみさんの両親、横田滋、早紀江さん夫妻が昨年11月か12月頃に、安倍晋三首相に対して孫娘のキム・ウンギョンさんとの面会を実現するよう要請したことから始まった。

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