[ジャカルタ発]三月十四、十五の両日、ライス米国務長官はインドネシアを初訪問した。ユドヨノ大統領やハッサン外相との会談では、昨年十一月に六年ぶりに全面解禁された軍事交流を一層拡大させることで合意。長官はまた、「両国は戦略的パートナーである」と断言し、インドネシア治安当局が展開している東南アジアのテロ組織ジェマア・イスラミア(JI)への摘発攻勢や、二〇〇四年に初の直接選挙で選ばれたユドヨノ大統領が進める民主化政策に惜しみない賛辞を贈った。 ライス長官による「ラブコール」は、全人口二億四千万人のうち一億九千万人という世界最大のイスラム人口を抱え、穏健思想を唱導するインドネシアが、東南アジアのイスラム過激派封じ込めに向け、米国との対テロ連携を本格化させたことへの満足感を反映している。長官発言は同時に、東南アジア最大の民主国家として、「ASEAN(東南アジア諸国連合)に対する影響力を急拡大させている中国にくさびを打ち込む」(軍事・外交筋)役割を期待していることも示すものだ。 米国は、インドネシア国軍が併合下の東ティモールで行なった住民虐殺などを理由に、一九九九年に武器輸出などの軍事交流を全面凍結した。しかし中国は、これによって生じた米国の影響力の空白を突き、台湾海峡有事の際にシーレーンの要衝であるマラッカ海峡の通航を確保できるよう、沿岸国インドネシアとの軍事協力を拡大。対抗を迫られた米国は、「国軍は着実に改革を進めている」(ヒル国務次官補)との理屈を立てて、軍事交流再開に踏み切った。

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