米民主党は新たな「公共哲学」を語れるか

執筆者:中山俊宏2006年6月号

中間選挙まで半年となった今、民主党への追い風が吹く。だが、民主党には払拭せねばならない“四つの神話”があった。 ブッシュ政権が二〇〇一年に誕生して以来、民主党にとって追い風がここまで強く吹いていたことはない。イラク戦争の長期化、ハリケーン「カトリーナ」直撃後の混乱とその後の責任の押しつけあい、そして共和党議会指導部とKストリート(ロビー業界)の癒着など、〇六年十一月の中間選挙まで約半年というタイミングで、民主党は恰好の攻撃材料を手に入れたといえる。 この三つの問題は、外交・安全保障、内政、権力の運用という面で、共和党支配の失態を象徴している。これに加えガソリン代の高騰も、共和党攻撃の恰好の材料となっている。新たに表面化した不法移民問題も、党内に対不法移民強硬派を抱える共和党にとって、より扱いにくい問題である。五年余り続いた共和党政治に代わる変化を有権者は求めている。また常に燻り続けてきた保守派内部の矛盾がここにきて目立ち始めているという状況もある。モデルとなる九四年の「革命」 〇四年の大統領選挙において活気づいたリベラル派の活動家たちは、このような状況を前に、とりわけ勢いづいている。特に「ネットルーツ」と呼ばれるインターネット上のリベラル派の活動家たちの攻勢は、民主党内に新たな力学を生み出している。彼らが目指すのは一九九四年の中間選挙で共和党が行なったことの再現だ。「ギングリッチ革命」と呼ばれた九四年の中間選挙において、共和党は下院で五十二議席、上院で八議席を追加し、議会運営、ひいては政治の主導権を手中にした。公共哲学の定義論争という側面から見れば、九四年以降は保守思想が米国政治に浸透していった時期でもあった。九四年は単に共和党が勝利した中間選挙ではなく、ある意味、分水嶺的な選挙であったとさえいえる。

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