胡錦濤国家主席の訪米で期待されたブッシュ大統領への「プレゼント」はなかった。人民元切り上げに踏み切らない中国政府の「通貨操作」に対し、増え続ける対中貿易赤字に苛立つ米議会は懲罰動議をちらつかせている。訪米から約一カ月後にようやく一ドル=七元台になったがその上昇は遅々としている。円やユーロに対してはドル安を反映してむしろ下がり気味だ。 だがここに来て、人民元の需給のみならず、世界の資本市場にとって重要な動きが始まった。「適格国内機関投資家(QDII)政策」の解禁だ。四月十四日、中国人民銀行(中央銀行)や国家外為管理局などは連名で、政府の基準を満たした中国国内の銀行や保険会社などに対して、外貨購入や海外投資を認めると発表した。 この政策は、国内投資家の資産が海外に移り、成熟していない中国株式市場への投資資金が根こそぎ奪われかねないとの懸念から、五年の長きにわたり先延ばしされてきた。しかし昨年来の中国株式市場改革で、市場で取引されない政府所有の「非流通株」の解消が進み、投資の受け皿としての国内証券市場は立ち直りつつある。QDII政策を実施する素地が整ったとの判断がなされた。 投資は確定した利益が見込める市場に流れるはず。中国からの大規模な資本流出はまだ具体化していないが、アジア二位の規模を誇る香港株式市場は期待を織り込み、株価は大幅に上がった。

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