スイスに本拠を置くエンジニアリング大手ABBが経営破綻の淵から生還を遂げた。一九九〇年代には日本でも「スピード経営のモデル」と絶賛された同社だが、買収による無謀な多角化がアダとなり、一時は資金繰りに窮するところまで追い込まれた。そのABBが二〇〇五年決算で五年ぶりに黒字化。復活の背景には非中核部門の売却など思い切ったリストラがあったが、それに加えて猛烈な勢いで電力関連のインフラ整備を急ぐ中国からの特需があった。 ABBは今年に入ってからだけでも、上海の発電所向け変圧器を一億人民元(約十四億円)で受注したほか、水流ポンプ所向け設備などを相次いで受注。また、ロボット事業の世界本部を上海に設置したり、中国企業との変電設備の合弁事業にも乗り出すなど、中国傾斜を強める。ABBが得意とするのは発電所や変電所の設備といった大型のもの。国家規模のプロジェクトがないと、業績を伸ばすのは厳しい。そんな中で中国は世界一のインフラ投資国だ。最も象徴的なのが揚子江の上流に建設中の「三峡ダム」。総額二百四十億ドル(約二兆七千億円)という巨額の資金を投じて〇九年の完成を目指す世界最大の建設プロジェクトだ。一九九七年以降、十億ドル(約千百億円)を超える設備をABBは受注しているのだ。

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