陽光が射す春の首都ワシントン。ホワイトハウスから目と鼻の先にあるホテルで朝を迎えた。世界中の都市を旅する際に心がけることのひとつは、なるべく中心部のホテルに投宿すること。会合や面会に便利なだけでなく、都市の生態を垣間見ることができるからだ。本来のスケジュールにない旅の意外性に遭遇できる最前線でもある。 中国の胡錦濤国家主席が四月中旬にワシントンを訪問したときも、運良くその現場に立ち会うことができた。とはいってもホワイトハウスに足を踏み入れて米中首脳の記者会見を傍聴したわけではなく、親中派と反中派の集会を間近で観察することができたに過ぎないのだが。 親中国政府派は、米中両国の小さな国旗を手に、「熱烈歓迎胡錦濤主席訪問美国」や「祝胡主席代表団旅途愉快」の真っ赤な横断幕を用意して声援を送っていた。しかし親中派が動員した人数は予想に反して少なく、拍子抜けするほどであった。 これに対して反中派は、通常は台湾独立派、チベット独立派、法輪功の三点セットで迎え撃つらしいが、今回は法輪功が突出して反中デモと集会を組織していたのが目を引いた。台湾では野党・国民党の首脳陣が大陸を訪問し、インドにあるチベット亡命政権も中国との対話を模索しているため、台湾とチベットの独立派はともに反中デモを控えたそうだ。

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