資源ナショナリズムの「復活」。市場の調整機能をねじ曲げたチャベス大統領の“成功例”が、原油市場に本当の危機を招きつつある。 六月一日、ベネズエラの首都カラカスでOPEC(石油輸出国機構)の臨時総会が開かれた。かつては「石油価格カルテル」のイメージが強かったOPECも、いまは価格高騰防止力や適正価格実現力はほぼ無い。いまやスポット・先物の両取引が整備されたグローバル市場において原油価格は決定されている。世界の石油生産量の四〇%を占めるOPEC加盟各国は現行の日量二千八百万バレルという原油生産枠の維持を決めたが、今年四月から一バレル=七〇ドル台に高止まりした原油価格を落ち着かせるニュースではなかった。 いま原油価格が高騰している原因は、必ずしも現実の原油需給全体が逼迫しているからではない。むしろ、主要産油国の政情不安などから、近い将来に需給逼迫が起こる「かもしれない」と、“期待”に駆られた投機・投資マネーが原油先物市場に大量に流れ込んでいることが大きい。 投機・投資の担い手は今やヘッジファンドなどよりも年金基金や商品ファンドなどの“石油の素人”。グラフの値動きに敏感な素人筋には、先進工業国の原油在庫量などファンダメンタルズ(基礎的要件)よりも、イラン核開発問題やナイジェリアの治安悪化など、昨今の産油国の政情不安の方が説得力を持つのだろう。

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