ロシアの元石油王(ユコス元社長)でプーチン大統領と対立して投獄されたミハイル・ホドルコフスキーが、シベリアの刑務所で不当待遇へのハンスト抗議など懸命の獄中闘争を続けている。七月にロシアが初めて主催する主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)を前に、「政治犯」の存在から内外の目をそらしたいクレムリンとの駆け引きも激しさを増しているようだ。 ロシア一の大富豪だったホドルコフスキーは、脱税の罪などで禁固八年の実刑判決を受け、昨年十月にモスクワと時差六時間の内陸チタ州クラスノカメンスクの刑務所に移送された。他の受刑者とともに雑居房で生活しているが、獄中作業や所持品に関する規則違反などを名目に独房に収監する「不当な懲罰」(弁護士)が頻発。六月にはハンストで体調を崩し入院する事態となった。 ホドルコフスキー陣営は、ホームページを通じて支援を訴えており、月に数百通の抗議書簡が刑務所に届く。ホドルコフスキー自身は、帝政時代に専制と農奴制の廃止を求めて蜂起し、やはりシベリアに流刑となったデカブリスト(十二月党員=貴族の青年将校ら)に自らをなぞらえている。 一方、プーチン大統領周辺はホドルコフスキーが「悲劇の人物」として存在感を増すことを警戒、沈黙に追い込む手段を思案中とみられる。

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