「カネ余りを背景にした過剰流動性相場の終焉」――。日米欧の利上げ観測をきっかけに、五月中旬に世界を襲った同時株安。なかでも欧米リスクマネーの大量流入が株価を大きく押し上げてきた新興市場国への影響は甚大で、インドやロシアなどBRICs諸国の株価は五月上旬の直近高値から一割超も急落した。 打撃を受けたのは日本の個人投資家も同じだ。昨年から設定が相次ぐBRICs関連の投資信託の残高は二兆円前後にまで急増していたと見られ、特に最近運用を開始した投信は大幅な元本割れとなった。例えば、中国やインドなどBRICs諸国を中心に投資するモルガン・スタンレーの「世界新興国株ファンド」は、四月の設定時と比較しての下落率が約一五%にも達した。 通常ならさらに下落する下値リスクを警戒して解約が殺到してもいいはずだが、「最近の投信では逆に資金が流入したケースもある。株価の調整が一時的とみている証で、個人のリスク選好が浮き彫りになった」。 個人を果敢な投資に駆り立てているのは、昨年来の株高による「成功体験」だ。昨年度だけで日経平均株価は約四割も上昇し、短期志向の個人を中心に「買えば上がる、上がるから買う」という投資行動が浸透した。五月からは日本株も本格的な調整局面を迎えているが、株価はいずれ反発するとみて個人はむしろ買いを膨らませている。

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