被災地の市場回復を妨げ、地元経済の空洞化、ひいては人口流出につながる問題の根は、今なお福島第1原発で汚染水がたまり、漏えいや流出が相次ぐ現状と、対策を講じられずにいる国への不信だ。より厚く重く、固定化する「風評」は、生産者の苦悩、消費者側の不安を終わりなく隔てる壁になりかねず、克服の道の模索こそ福島、宮城、岩手の枠を超えて取り組むべき震災4年目の最も厳しい課題――。被災地の声は一致している。

 

 4月2日の「フォーサイト」に掲載された拙稿「『風評』の固定化:『東北被災地』に立ちはだかる大きな壁」で、筆者は福島県南相馬市の農家集落が自力復興を懸けて栽培を始めたネギや、宮城県石巻市北上町十三浜の漁業者が復活させた養殖ワカメの価格低迷を紹介し、上記のような問題提起をさせてもらった。「風評の固定化」は東北の被災地の浜でさらに広がり、流通を含めて構造的な「壁」となっていた。宮城県塩釜市の水産加工業の現状を中心に報告したい。

 

復旧は早かったが……

 被災後の更地が目立つ塩釜漁港の後背地で、水産加工の苦境が続く(筆者撮影)
被災後の更地が目立つ塩釜漁港の後背地で、水産加工の苦境が続く(筆者撮影)

 松島湾に面した塩釜市の漁港周辺は2011年3月11日、約5メートルの津波に襲われた。が、漁港や魚市場、水産加工団地などが全壊した石巻、気仙沼などに比べて被災は壊滅的ではなく、かまぼこ類を中心にした水産加工工場群の復旧は沿岸でも早かった。

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