北朝鮮とロシア「急接近」の深いワケ

執筆者:名越健郎2014年6月23日

 北朝鮮は5月末、拉致被害者の全面調査を約束するなど、日本に大きく歩み寄ったが、ロシアへの接近も強めており、金正恩(キム・ジョンウン)体制発足後凍結状態だった朝露関係が拡大基調にある。中国とのパイプ役だった張成沢(チャン・ソンテク)氏の処刑後、中国は石油など対北無償援助を停止しており、北朝鮮の日本とロシアへの接近が顕著だ。中韓蜜月に対抗する目的もあるようで、朝鮮半島をめぐる国際構図が変化しつつある。

 

中韓蜜月に対抗

 中国の習近平国家主席は7月3、4両日、韓国を公式訪問する予定で、昨年6月の朴槿恵(パク・クネ)大統領の訪中への答礼となる。中国最高指導者が同盟国の北朝鮮に先だって訪韓するのは前代未聞。中韓は経済関係や対日歴史認識で連携を一段と強化しており、北朝鮮は孤立を強めている。

 外交筋は、「北朝鮮は、中国が韓国主導による朝鮮半島統一を容認したのでは、と恐怖感を抱いているようだ。韓国主導の統一の場合、金王朝は崩壊する」と指摘した。中国が社会主義緩衝地帯の北朝鮮崩壊を容認することはまず考えられないが、金正恩政権はそう受け止めている可能性があるという。

 張成沢氏とそのグループの粛清に激怒する中国は今年1月以降4月まで、北朝鮮への石油の提供を停止していることが、中国税関当局の統計で判明した。中国の北朝鮮向け無償支援は年間、食糧10万トン、石油50万トンで、総額2000万ドル相当に上り、これらがストップすることは北朝鮮経済にとって打撃だ。中朝関係悪化を背景に、北朝鮮が対日、対露接近を開始したのは間違いない。

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