ようやく公的資金返済の“入口”にたどり着きそうなりそなグループ。だが、組織の中は問題だらけで――。「銀行を良くするために、あなたの力を貸して頂けませんか」 メガバンクを執行役員で退職したA氏のもとにこんな話が舞い込んできたのは、昨年のこと。ヘッドハンターとして足を運んできたのは、六月二十七日に就任から満三年を迎える、りそなホールディングス(グループの持ち株会社)の細谷英二会長だった。面識こそあれ決して親しい間柄ではないA氏に対し、細谷氏は「(三兆円近い公的資金に支えられる)りそなグループの再建に力を貸して欲しい」と懇願したばかりか、「将来、自分の後継者になって欲しい」とまで言ったという。 かねて「後継者が育てば二年で辞めたい」と話していた細谷氏が、後継含みで口説いて回った相手の数は、筆者が知るだけでも六人。いずれもメガバンクの役員経験者だ。細谷氏の動きは、二〇〇三年に国有化されたりそなの“出口”がまがりなりにも見え始めたことと関係しているのだろう。 りそなグループは、今年度を「公的資金の本格返済スタートの年」と位置づけていた。五月二十三日の決算発表で返済方針を発表し、遅々とした歩みながらも再建が軌道に乗りつつあることをアピール。公的資金の申請直後には四七円にまで落ち込んだ株価も三五万二〇〇〇円(六月五日現在、〇五年八月に一〇〇〇株を一株に併合)にまで回復している。なのに、細谷氏のスカウトに応じた後継者候補が出現という話は聞こえてこない。実は、業績回復の陰で別の問題が組織を蝕んでいたのだ。

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