私たちが同時代として生きている「一九七五年から二〇二五年までの半世紀」(私個人の場合は、十五歳から六十五歳までの五十年)は、百年先にどう総括されるのだろうか。 むろんさまざまな切り口での総括の一つとしてではあるが、「情報技術(IT)が世界を大きく変えた時代」と総括されることは間違いなかろう。 素人ながら思想・哲学の歴史をひもとけば、次世代に大きな影響を及ぼした偉大な思想・哲学の多くが、激しく変化する同時代の最先端で、同時代の意味を、また同時代をいかに生きるべきかを必死に考える営みから生まれてきた。その営みの途中経過は、同時代にはそれほど理解されず、その意義は歴史の判断に委ねられるため、評価の定着はかなりあとになる。「一九七五年から二〇二五年までの半世紀」も、既に最初の三十年が過ぎている。半導体の発明に端を発するパソコンの誕生、チープ革命の継続、インターネットの発展、オープンソースの勃興、検索エンジンによる世界の知の体系化、そしてこれから二十年かけて起こる未知の大変化……。こうした新技術のすべてを創出し続けてきた起業家主導型経済メカニズム、そのメッカたるシリコンバレー、シリコンバレーに独特の“生態系”や精神、プログラマーたちが共有するハッカー倫理、先端ハイテク産業での経営思想……。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。