初夏の青空が広がった五月下旬の日曜日、東京都心にあるルクセンブルク大使公邸でピアノ・コンサートが開かれた。 ルクセンブルクのミッシェル・プランシェール・トマシーニ駐日大使(四五)は、東京に三人いる女性大使の一人。音楽に造詣が深く、世界に音楽家の友人が多い。大使は機会があるとそうした音楽家を公邸に招いてミニ・コンサートを開き、交際の場を作ってきた。 この日の演奏家は大使の知己である国立音大教授でピアニストの花岡千春氏。外交団や大使の友人、大使の三人の子供の同級生らを前に、花岡氏の専門であるフランス人作曲家のフランソワ・クプラン(十七―十八世紀)とアレクサンダー・タンスマン(十九―二十世紀)、さらにショパン、ベートーベンの曲を披露した。コンサート後、続きの広間に飲みものと食事が用意され、招待客はコンサートの余韻を楽しみながら、歓談のひとときを過ごしたのだった。 このときもそうだったが、私はルクセンブルク大使公邸に招かれる度に、感心することがある。一つはトマシーニ大使の巧みなもてなしである。招待客が手持ち無沙汰にしていないか気を配り、人と人を共通の話題で引き合わせ、ユーモアで座を盛り上げる。一方で、在外公館の長としてあいさつやスピーチをすることもある。大使ともてなしの二役をこなすのは簡単なことではないはずだが、傍目には難なくこなしている。

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