いま脚光を浴びる中国現代美術の秘密

執筆者:関亜矢子2006年7月号

「政治の道具」から解き放たれた中国アートが、欧米のマーケットで注目されている。その理由と将来性をさぐる。[ロンドン発]三月末、ニューヨークのサザビーズで初めて「現代アジア美術限定」のオークションが行なわれた。これは新たな美術市場の誕生を象徴する出来事だった。しかも、「現代アジア美術」とはいうものの、出品の大半は中国作品であり、中国現代美術がついに世界に認知されたことを物語っている。 このオークションでの総売上げは、十億円との予測をはるかに上回る十五億円に達した。なかでも、九十七万九千二百ドル(約一億一千五百万円)で購入された張曉鋼の絵画「ブラッドライン(血脈)シリーズ」の一作「血線系列・同志120」は、十人以上が激しく競り合う展開となり、落札のハンマーが下りると、会場中から拍手が湧いた。 漢字をモチーフにした中国人らしい作品で知られ、四千もの「新字」を創作した徐氷の「リビング・ワールド」も四十万ドル(約四千六百万円)で落札された。この作品は、百近い「鳥」という漢字の模型が天井からぶらさがるものだ。地面に近いものは字だが、天井に近づくにつれ鳥の絵に変化し、最後は鳥が羽ばたくように見える。

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