企業が相次いで決算を発表する五月から六月にかけて、日本橋兜町の東京証券取引所は一気に活気づく。ただ、人だかりには別の理由もある。四台あるエレベーターの使い勝手の悪さだ。一斉に降りてきたり、一台も降りてこなかったり。“お客様”の上場企業に配慮して一台ごとに受注メーカーが違うため連係が悪く、待たされることが多い。それだけならば多少の不便を我慢すればすむが、東証の根幹であるコンピューターシステムについても同じとなると、話は違ってくる。 約定(株式売買の成立)件数を処理しきれず、立会停止に追い込まれた前代未聞の不祥事から五カ月。東証が解決すべき火急の課題は、システムの増強だ。 東証は六百億円を投じ、二〇〇九年度をメドにシステム改革を進めている。まず、五月八日に従来の「五百万件」から「八百四十万件」に増やした一日の約定処理件数の上限を、さらに「二千万件」まで引き上げる。さらに、一つの売買注文をさばく時間を現在の「一秒弱」から「百分の一秒」にまで縮める。実現すれば、ニューヨークやロンドンを上回る世界一のシステムを誇る取引所になる――東証の描く青写真だ。 新システムは、(1)売買、(2)約定、(3)情報系、の三つに大別できる。今のところ、(1)は富士通かIBM、(2)は日立、(3)はNTTデータが開発を担当すると言われている。一月十八日の立会停止の元凶は(2)にあたる。

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