日本人の拉致被害者や行方不明者らの安否に関する北朝鮮の「特別調査委員会」。金正恩(キム・ジョンウン)政権がこの委員会を発足させたことについて、安倍政権もメディアも高く評価し、拉致問題解決への期待が従来になく強まっているように見える。

 安倍晋三首相は7月3日、対北朝鮮独自経済制裁の一部解除の理由について、「国防委員会、国家安全保衛部という国家的な決断と意思決定ができる組織が前面に出て、かつてない態勢ができたと判断した」と述べた。これを受けた解説記事では「秘密警察関与を評価」(読売新聞)の大見出しも見られた。

 だが、北朝鮮の秘密警察による調査は本当に信頼に足るものなのか、公開情報を基に検討を加えてみたい。

 北朝鮮側の説明によると、調査委は北朝鮮体制内の全機関を調査できる特別な権限を持ち、総勢30人程度で構成。拉致被害者の安否情報を握るとされる秘密警察組織「国家安全保衛部」副部長を兼務する徐大河 (ソ・デハ)国防委員会安全担当参事を委員長に、(1)拉致被害者(2)行方不明者(3)日本人遺骨問題(4)残留日本人・日本人配偶者――の4つの分科会も設置。拉致被害者分科会の責任者は姜成男 (カン・ソンナム)国家安全保衛部局長が務める。だが、国家安全保衛部は、まさに北朝鮮の秘密警察に当たるのだ。

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