これからが面白いビルとヒラリーの物語

執筆者:徳岡孝夫2006年7月号

 よその夫婦のことを心配しても始まらないが、ビルとヒラリーのお伽噺は、この先どうなるのだろう。 ヒラリー・クリントンにとって当面のヤマ場は、今年秋の中間選挙だろう。彼女はいま、ニューヨーク州選出の連邦上院議員。アメリカを経営する百人の重役の一人といっていい。早くも演説や資金集めのパーティをしている。有力なライバルもいないから、再選確実といって間違いない。人気も上々だそうである。だがこれが、傍目に見るほど簡単ではないという。 彼女はニューヨークに縁もゆかりもない、いわゆる落下傘候補である。そしてニューヨークには、東京では想像もできないほどの強い「わが町」意識がある。一例がメトロポリタン歌劇場、幕間のロビーに満ちる「あーら、しばらく」で始まるお喋り。一度のベルくらいでは、なかなか客席に戻ってくれない。あの賑やかさ、東京文化会館や歌舞伎座にはないものだ。 民主党にはヒラリーに対抗するタマがないそうだから彼女が出るとしても、共和党が強烈な地縁ある候補者を出せば、ラクに勝てるとは思えない。しかもヒラリーは、ただ勝つだけではダメなのである。 圧倒的な票差で勝たねばならない。もし辛勝なら、そういう勝利は二〇〇八年の大統領選挙に出る踏み台にならないと、これは遠い日本から眺めている私の感じである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。