インドネシアのユドヨノ大統領にとって七月五日の北朝鮮の弾道ミサイル発射は「寝耳に水」だったが、一方で、ある意味「歓迎すべき突発事案」だったともいわれている。 というのも、ユドヨノ大統領は七月十八日から平壌訪問を予定しているが、大した目的もないため、内外の理解と支持を得られていないのが実情だったからだ。 故スカルノ大統領と金日成の関係に基づくインドネシアと北朝鮮の“友好”関係だが、実際には戦略的にも経済的にもつながりは薄い。にもかかわらず、メガワティ前大統領同様、ユドヨノ大統領も北朝鮮外交には積極的な姿勢を見せている。その背景には、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でインドネシアの地位が低下する一方、アジアにおける日米中韓による影響力争いが激化する中で、「行き詰まった六カ国協議の打開策を探る橋渡し役」となって存在感を示したいという思惑がある。 とはいえ、北朝鮮問題でインドネシアに何らかの役割を期待する関係国はなく、毎回北朝鮮の言い分を伝えるだけの「子供の使い」(ASEAN外交筋)になっている。それだけに、ミサイル発射は「発射後初の首脳会談」に臨んだ首脳としてユドヨノ大統領に国際的な注目を集めるチャンスとインドネシア側は期待しているのだ。

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