輸入再開されても、また政治問題化する可能性が大いにある。米国の中途半端な見直しでは、日本での失地回復はおぼつかないからだ。「再開の道筋が明確になったことに感謝する」 六月二十九日、ワシントン。ブッシュ米大統領の謝意に、公式訪米中の小泉純一郎首相は満面の笑みで大きく頷いた。牛海綿状脳症(BSE)対策の不備で途絶した米国産牛肉の輸入は、本誌五月号で指摘した通り、日米首脳会談で「再開の見通し」が伝えられた。七月下旬にも米国産牛肉の輸入が再開する。 問題はこれからだ。二〇〇三年末に米国でBSEが発生する前まで、日本の牛肉市場は国産が約四〇%、輸入が約六〇%だった。輸入牛肉のうち米国産は半分近くを占めていた。しかし、実質二年半にわたる米国産の輸入停止で日本の市場は大きく変わった。 今や輸入牛肉の八九%がオーストラリア産だ。そのほかニュージーランド産が九%だから、ほとんどがオセアニア産ということになる。さらに、魚や豚肉の代替需要が増加し、BSEが米国で発生する前(二〇〇二年度)に約九十三万三千トンだった日本の牛肉消費量(部分肉ベース)は、発生後(〇五年度)に約八十万六千トンと一四%縮小した。市場全体が縮小する中で、競争は激化している。米国産の輸入量の回復に時間がかかるのは確実だ。

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