7月24日、「非資源ナンバーワン商社」といわれる伊藤忠は、タイのCP(チャローン・ポカパン。漢字名は正大)集団との資本提携を発表した。CP集団は約1000億円で伊藤忠株式の5%弱を取得し、大株主になる。一方の伊藤忠はCP集団の中核企業であるCPP株式の25%を約870億円で取得すると同時に、CP集団が日本政策投資銀行と設立した投資事業組合を引受先とする第3者割当増資を実施する。

 一連の動きを日本企業のアジアへの攻勢の表れと歓迎する声が多いようだが、今回の業務提携を持ち掛けたのがCP集団総帥のタニン・チョウラワノン(謝国民、1939年生まれ)ということだから、やや皮肉な見方をするなら、日本側の伊藤忠と日本政策投資銀行がまんまと乗せられた、といえないこともない。いや、伊藤忠は中国ビジネスに強い。そのうえにタニンは中国政府と太いパイプを持つ。ならば、今回の提携話の影の主役は、あるいは中国政府ではなかろうか。

 

中国政府の管轄下

 タニンと中国政府との関係は1970年代末期に遡る。中国政府が改革・開放政策に踏み切った直後、外資第1号として深圳に乗り込んでいる。「風険投資」、つまりハイリスク・ハイリターンの商法だが、彼には先んずれば人を制す、最初に乗り込んだ者を相手は忘れない、という読みがあったはずだ。彼は、当時の深圳にはマトモなホテルはなく、用意された宿舎には給湯設備すらなく、シャワーは水だったと回想している。

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