当初は民営化まで視野に入れていた改革論議は、放送業界と族議員という「既得権タッグ」にすっかりミニマイズされてしまった。「袈裟懸けに切ろうとしたけど、思ったより鎧が硬かったから刀が折れちゃったんだなあ」 七月七日、政府が策定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針二〇〇六」が閣議決定された。そこに盛り込まれたNHK改革の方針を、ある政府関係者はそう例えてみせた。 盛り込まれた、と言っても主な内容は二点のみ。(1)チャンネル削減は衛星放送だけを対象にし、(2)制作部門の一部を本体から分離し、関連子会社との一体化を検討。放送設備を抱える伝送部門の分離は、会計上の対応にとどめる――。通信・放送改革の旗を振ってきた竹中平蔵総務相は、閣議決定に先立つ四日の会見で、「当初期待していたとおり」「大変成果があった」と強がってみせたが、自らの肝煎りで設置した私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」(以下「懇談会」)が足かけ六カ月に及ぶ議論の成果をまとめた最終報告(六月六日に発表)からさらに後退したのは明白だった。 それは“三度目の後退”だった。鳴り物入りで始まった改革論議が尻すぼみに終わるまでの半年間の舞台裏を追えば、それが“予期された失速”だったことがわかる。

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