豊富なエネルギー資源を狙って米欧中露そして日本の「カザフ詣で」が続く。“要衝”にあって世界の資源戦略を左右しうるいま、ナザルバエフ大統領は何を思うのか――[モスクワ発]「カザフスタンを制した者がユーラシアと世界を制する」――。英国の地政学の大家、マッキンダー(一八六一―一九四七年)の地政学論を地で行くかのように、ユーラシア大陸の中枢に位置し、エネルギーや戦略資源の豊富なカザフが、二十一世紀の大国間グレートゲームの争点になろうとしている。 マッキンダーによれば、人類の歴史は「海洋国家」と「陸上国家」の闘争の歴史であり、いずれ海洋国家が衰退し、陸上国家が優勢になる。ユーラシア大陸内部で海洋国の軍艦が遡行できない地域は大陸国家の聖域であり、この「ハートランド」を制した国が覇権を握るという。だとすれば、カザフこそハートランドかもしれない。 旧ソ連軍参謀本部はマッキンダーの地政学を正統なテーゼとして信奉した。ソ連邦崩壊後、ハートランド争奪戦は宙に浮いたままだったが、原油価格が高騰したこの一、二年、米中露、欧州連合(EU)、インド、日本などを巻き込んだカザフへの求愛合戦が顕著だ。 中央アジア五カ国はソ連解体でほぼ同程度の貧しい経済水準で出発したが、今日カザフの一人当たり国内総生産(GDP)は二千七百ドル。五百ドル前後に低迷する他の諸国から突出している。外貨準備高も増え、債務国から債権国に転換した。それもこれも資源価格高騰の恩恵である。

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