国家主席といえどもすべてを完全にコントロールできているわけではない (C)EPA=時事
国家主席といえどもすべてを完全にコントロールできているわけではない (C)EPA=時事

 中国の習近平政権が様々な「内なる敵」との戦いに揺らいでいる。周永康前政治局常務委員ら相次ぐ“政敵”の摘発で権力基盤は強化されているとの見方があるが、戦いはむしろこれから本格化する。敵とは、石油、鉄道、金融など自己利益追求に走る国有セクターと、共産党の軍隊でありながら「国家内国家」のような暴走を始めた人民解放軍だ。さらに、中国の最も深い内陸部である新疆ウイグル自治区では、弾圧に抵抗するウイグル族と泥沼の戦いに突入している。

 かくて 習政権は、東シナ海、南シナ海での対外的な緊張とは比較にならないほど深刻な“内憂内患”に直面している。習政権の内情を2回にわたって分析する。

 

本当のターゲットは「3大経済勢力」

 前政権で最高指導部メンバーだった周永康の摘発はもはや意外ではなかったものの、内外に大きな衝撃を与えた。巷間言われる「常務委員経験者は訴追しない」という原則が覆されただけでなく、江沢民元国家主席にきわめて近かった人物を追い落としたからだ。だが、これをもって、習主席対江元主席の権力闘争に習主席が勝利したという見立ては見当外れだろう。もともと習主席と江元主席が政治的に対立する理由はないからだ。胡錦濤前主席が描いた青写真ではナンバー2の首相止まりだったはずの習氏をナンバー1の共産党総書記・国家主席まで引き上げたのは、長老としての江氏自身の影響力だった。

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