日本の防衛・安全保障を担うべき国民が信頼できる政治家は、与野党見渡しても石破茂現自民党幹事長を措いていない。石破氏は外野席が言う所謂「軍事オタク」ではない。石破氏は課題をとことん学習するのである。防衛省大臣執務室の机上に積まれた書籍の山に隠れて石破大臣(当時)の姿が見えなかったという伝説はあながち誇張ではない。筆者も現場に遭遇した経験がある。

 知見が豊かになり関心が深まると核心をつく疑問も多くなる。防衛省内局や幕僚監部の優秀な部員、制服幹部は担当正面の識能に優れているのだが、石破大臣の疑問に応えられる者は多くなかっただろう。裏を返せば、当時、「石破大臣は細かいから……」と嫌われ、敬遠されたという話を仄聞するところにも証左は在る。

 

 さて自民党人事は、「石破茂幹事長の交代、新設の安全保障法制担当相就任」が焦点となっている。石破氏の識見、そして防衛畑での経験に裏付けられた良き「国を背負う軍事オタク」が適任であると考えるのは当然であろう。しかし、それは安倍晋三総理と石破氏の間に「集団的自衛権行使」に関わる理解と日本の将来の姿がしっかりと共有できている場合に限って成り立つ人事である。

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