五月下旬に“職務復帰”したタイのタクシン首相による八月二日のミャンマー電撃訪問について様々な憶測が流れている。首相府筋によれば、国内向けには、中国が先行しているとされるベンガル湾沖の天然ガス田の開発権獲得競争への参入という国益重視の姿勢を強調し、対外的には、四月末以来中断していた外国訪問の再開後初の外遊先としてミャンマーの新首都ピンマナに海外首脳では一番乗り。しかも、軍政の最高実力者タン・シュエ議長と会談することで、首相としての存在感をアピールする狙いがあったという。 タクシン氏は事前に、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のフィリピンのアロヨ大統領に電話でミャンマー訪問を通告。帰国後、記者団には「自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏の即時解放を軍政に強く求めた」と説明した。だが、同行筋によれば、「首相は解放は当面ないと踏んでおり、ASEANの首脳で最初にピンマナでタン・シュエ議長に会った手前、型通りの要請をしただけ」という。 ただ、ガス田の開発権獲得については、中国に先を越されまいと、軍政を熱心に説得。中国は、タイの域内影響力への脅威になりつつある。最近では中国雲南省当局がタイ北部チェンライ県との工業団地造成計画を白紙化し、ラオス政府と新たな開発用地のリース契約を結ぶということもあった。

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