再生機構が売り逃げしたダイエーの「行方」

執筆者:山田雄一2006年9月号

 産業再生機構はダイエーの「再生の目処がついた」(斉藤惇社長)と、保有するダイエー株のすべて(約六千六百四十九万株)を丸紅に売却した。売却額は六百九十八億円。再生機構が派遣していた二人の取締役も退任し、ダイエー処理の終了である。一方、丸紅の保有比率は一〇・九%から四四・六%に高まり、ダイエー再建を主導する立場になった。再生機構は自らの解散を一年前倒しして来年三月末にする、と発表しており、ダイエー処理を急ぐことは分かってはいたが、それにしても株売却は唐突だった。 だいいち、斉藤社長自身、「二〇〇六年末あたりにはいろいろ(処理の)話がでてくる」と余裕のある言い回しに終始してきたはずだった。再生機構が描いた青写真では、再建二年目となる今期(〇七年二月期)、黒字体質を定着させ、ダイエー株を高値で売却することを目論んでいた。 ところが、今回、再生機構が丸紅に売却したダイエー株の価格は一株わずか一〇五〇円。売却当日の八月四日の株価(二二五五円)の半値以下である。 今回の株売却で、再生機構は出資額(五百億円)以上で売却できたうえ、追加負担もない、と胸を張る。丸紅にとっても、ダイエーの優良子会社であるオーエムシーカードや食品スーパーのマルエツまで握ることができ、一見、“美談”に見える。

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