今年2月に独立後最大の騒乱が起きたウクライナは、東部の内戦、クリミア喪失を抱え、重大な国家的危機に直面している。首都キエフは活気がなく、エネルギー不足で灯火管制が敷かれ、夜は暗く、人影も少ない。生活苦で治安が悪化しているようで、観光客も激減した。希望は、「脱露入欧」という新しい民族意識が社会に定着したことだろう。深まる生活苦に国民がどこまで耐えられるか、ポロシェンコ新政権は厳しいかじ取りを強いられる。

 

革命聖地が正常化

 ウクライナ当局は8月9、10の両日、革命の聖地となった首都キエフ中心部の広場「ユーロマイダン」からようやくテントやバリケードを撤去した。それまで、マイダンは交通が遮断され、活動家らがテントを設営して居座りを続け、炊き出しをしながら生活していた。赤と黒のウクライナ民族主義者の旗や西部の民族主義者ステファン・バンデラの写真が掲げられ、屋台の土産物屋が並ぶ。プーチン大統領を揶揄するTシャツやヤヌコビッチ元大統領を描いたトイレットペーパーも売られていた。

 一方で、テントの中にピストルや火炎瓶が置かれているのがテレビで放映されたり、夜間は治安が悪化するなど、キエフ市民は活動家の居座りに批判的だった。「マイダンにとどまるのは西部から来た失業者ばかり。昼は市民から寄付を集め、夜は非合法活動を行うごろつきだ」(タクシー運転手)。

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