インドのナレンドラ・モディ首相は8月末から5日間にわたって日本を初訪問、安倍首相との首脳会談に臨んだほか、経済界やメディア主催の講演会などに精力的に出席し、インドを大いにアピールした。圧倒的人気を背景に今春の総選挙で現与党を圧勝に導き、中国に次ぐ大国の指導者に上り詰めたモディ首相に対する日本の関心はきわめて高く、各地で歓迎を受けた。

 米国や中国、欧州連合(EU)などの主要国に先駆けて日本を訪問したのは、インフラ建設や技術・資金協力、そして企業の対インド直接投資などで最も有望かつ信頼の置ける国だと判断したからだ。インド経済が2000年代後半のように再び89%の高成長軌道に復帰するには、さらなる外国直接投資の誘致が不可欠。モディ首相はあちこちの講演会でインドの優位性や投資フレンドリーな政策、規制緩和をアピール。トップセールスでインド投資に逡巡する日本企業の背中を押すことに力を注いだ。

 ただ、日本側が期待していた民生用原子力協定の締結や日印安全保障協力の格上げ、そして新幹線の商談などでは具体的な進展がなく、いずれも両首脳が重要性や進展をアピールするにとどまった。

 近年は経済の低迷や汚職の続発、社会正義のゆらぎばかりが報道されてきたインドだが、モディ首相は一連の会談や講演会などを通じ、日本の官民に対し「インドは変わりつつある」という印象を与えることには成功したといえるだろう。

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