EU「新首脳人事」とウクライナ危機

執筆者:渡邊啓貴2014年9月8日

 ウクライナ情勢が揺れている。

 NATO(北大西洋条約機構)が、9月初めの首脳会議で新たに緊急即応部隊の編成を決議し、今般の情勢に重い腰をあげる兆しを一応みせ、ウクライナ、ロシアとOSCE(欧州安保協力機構)の間でも停戦に合意した。しかしヨーロッパの対応がこれで断固たるものとなったとは必ずしも言いがたい。先ごろ行われたEU(欧州連合)首脳人事にそれは明らかである。

 

旧東欧諸国初のリーダー

 8月末、EUの次期「大統領」(正確には欧州理事会=EU首脳会議=常設議長)に、ポーランド首相ドナルド・トゥスク氏、次期「外相」(外交安全保障上級代表)にイタリアのフェデリカ・モゲリーニ外相が選ばれた。12月1日に就任する。欧州理事会常設議長のポストは、2009年に発効したEUのリスボン条約で新設された。それまで半年任期の輪番制であった首脳会議議長を常設ポスト(1期2年半)に格上げし、EUの議事運営を安定化させるためであった。首脳会議の最重要職であることと、呼称が常任議長(プレジデント)であることもあって、俗称「大統領」とも呼ばれる。

 現在はベルギー首相経験者ファン・ロンパイ氏がその職にあるが、カリスマ性に欠け、存在感が希薄である同氏に代わり、57歳と比較的若く、活動的なトゥスク氏の差配に関心が集まっている。

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