米軍基地問題がからむがゆえに、沖縄の政治は読みにくい。日米安保関係にも大きな影響を及ぼす県知事選の微妙な人間関係を解剖する。 安倍晋三「新首相」にとって十一月十九日の沖縄県知事選挙は、十月二十二日の神奈川十六区、大阪九区の衆院補欠選挙とともに、政権発足早々の試練となる。とりわけ沖縄の結果は、日米同盟論者の安倍氏にとって特に重い。 そして、二期八年務めた稲嶺恵一知事(七二)の退陣に伴う今度の知事選の候補者選考の過程からは、沖縄政治の地殻変動の予兆も見える。 そもそも、本土では存在しない保革の対立構造が、沖縄にはある。冷戦終結後、日本の政治用語から消えた「革新」が沖縄で健在なのは、基地問題の存在ゆえである。米軍基地がある限り、反基地闘争がある。それが、革新陣営のエネルギー源なのだ。 果たして地殻変動が起きているのは保守陣営なのか、それとも革新陣営なのか――選挙結果が、その回答になる。本土より十数年遅れて沖縄政治でも二極構造が揺れ始めたように感じさせる今回の知事選だが、那覇市内で一般有権者に聞くと、関心は必ずしも高くない。 しかし東京、ワシントンにとって沖縄県知事選は、米海兵隊普天間基地移設の行方を左右する重要な意味を持つ。普天間移設の日米合意ができたのは一九九六年四月。代替施設を県内に建設することを条件に五―七年以内に宜野湾市の市街地の多くを占める普天間基地を返還する合意だったが、十年たったいまも実現していない。

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