世界に遅れをとる日本漁業の危機

執筆者:野嶋剛2006年10月号

もはや魚は高級食材。いまこそニッポン漁業復活のチャンスなのに、旧態依然とした政策と規制で、逆に衰退が早まるばかり。大ピンチだ。 世界最大の水産物市場である東京都中央区の築地市場。ここ数年、東京屈指の観光名所として、すっかり定着した。市場が開く月曜から土曜日までの午前中は日本人に混じって場内のすし屋に並ぶ欧米、韓国、台湾などからの観光客を見かけない日はない。築地に足を向ける大勢の外国人は、日本の特異な文化だった魚の生食が「SUSHI」の国際化で世界に受け入れられた証左だ。 一方、昨年から今年にかけてスーパーの棚に「ノルウェーサバ」を見かけなくなった。近年、形がよく脂が乗って値段は安いという三拍子揃ったノルウェー産は日本市場を席捲した。スーパーや弁当店で売られるサバの切り身だけでなく、各地のサバ寿司などでも使用された。しかし、ノルウェーが資源調整で減産したことに加え、いまや日本料理店が林立するロシアや欧州各国でサバ人気が高まり、彼らの提示価格が上がったのだ。従来のキロ二百―三百円から六百円に達する値上がりで価格がサーモンすら上回り、「大衆魚」の価格に適合しなくなったため、輸入が止まった。代わって国産サバが流通しているが、濃い縞模様が特徴のノルウェー産と国産との違いに気づく人や「今年はサバの脂の乗りが悪い」と疑問に思った人もいるだろう。

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