昨年11月のチリ大統領選挙を皮切りに今年14年にかけて、中南米諸国は大統領選挙が集中する政治の季節となった。10月に予定されるブラジル、ボリビア、ウルグアイでの大統領選挙を加えると、大陸部の半数に及ぶ9カ国で選挙による政権委譲が行われることになる(図表参照)。新興国の中では民主化の定着したこの地域の面目躍如といったところだ。

 全体では、チリ、コスタリカで新たに左派勢力が政権に就くなど、21世紀に入ってからの左派政権の潮流を引き継いだ形だが(拙編著『21世紀ラテンアメリカの左派政権』アジア経済研究所2008年参照)、資源価格の低迷などを背景に景気後退期に入る中で、10月に迫ったブラジル、ボリビア、ウルグアイの大統領選では、ボリビアを除くと左派現政権が苦戦を強いられる予想外の展開となっている。

 ブラジル、ウルグアイの選挙結果しだいでは、今後の中南米政治の動向に大きな影響が生まれる可能性が出てきた。とくにブラジルで政権交代があれば、南米の左派勢力を束ねる軸が揺らぐことになり、ベネズエラのチャベス後継体制の維持だけでなく、BRICS外交全体にも少なからず影響が及ぶことが予想される。

 

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