スーダンのバシル大統領が来年一月に予定されるアフリカ連合(AU)の議長就任へ向け、「世界最悪の人道危機」とされるダルフール紛争での“似非(みせかけ)”の和平演出に躍起だ。 今年一月にスーダンで開かれたAU首脳会議で、バシルは〇六年の議長の座を狙った。だが、クーデターで政権掌握したバシルは人権抑圧で知られ、反発した加盟各国がコンゴ共和国のサスヌゲソ大統領を選出。それでも引き下がらないバシルに、首脳会議は「ダルフール紛争解決」を条件に〇七年の議長就任を認める異例の決定を下した。 議長就任への野望がバシルを動かしたのか、五月に紛争当事者の政府と反政府勢力の一つが和平協定を締結した。しかし、別の二つの反政府勢力は調印を拒否し、住民虐殺を手がけたとされる政府系民兵の武装解除は手付かずの状態。この二カ月で人道支援関係者十一人が殺害されるなど情勢は悪化の一途だ。 国連安保理は八月三十一日、最大一万七千三百人の軍事・警察要員派遣を盛り込んだ決議を採択したが、バシルはこれを拒否。バシルの狙いは、住民虐殺の詳細を隠蔽したまま「紛争解決」を演出し、四カ月後のAU議長就任で権力基盤を固めることだ。

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