もう始まっている「ポスト安倍」

執筆者:2006年10月号

 この号が読者の手元に届くころ、自民党の新しい総裁が誕生している。いるだろう、ではなく「安倍晋三総裁」になっているのだ。九月二十六日の臨時国会冒頭には「安倍首相」も決定し、その日のうちに自民党新三役、新内閣閣僚が決定する。 良くも悪しくも政治は権力闘争である。あらゆる手段を講じて(歴史的には、ときに暴力を用いて)首相の座を手にするために争うパワーゲームである。自民党の総裁選はそういう意味で、わが国で行なわれるたったひとつの権力闘争であった。今回の総裁選を権力闘争とはいわない。名づけるとすれば、外国の政治学者が日本政治を分析する際に好んで使う、壮大なる「カブキプレー」がもっともふさわしいだろう。 七月下旬から東京、大阪、横浜、富山、札幌、広島、松山、盛岡、福岡、名古屋と全国十カ所で候補者そろいぶみの「公演」(講演ではない)を行なう田舎芝居である。主役はずっと前から人気絶頂の「安倍晋三」と決まっていた。「福田康夫」が出馬を断念してから、権力闘争のにおいが完全に消え、画に描いたような「茶番」になった。真打登場を意識してか、主役の出演が発表されたのは地方公演のちょうど半分が過ぎてからのことである。

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